大雪山のヒグマ

今年もあっという間に七月が過ぎ去り、大雪山の花畑が広がる季節は終わりました。

今年は過去最長の16日間籠りました。荷物を2日間に分けて約60kg上げました。出来る限りの食料を詰め込みましたが、僕の体力では16日間分ので精一杯。体力がもっとあればこれよりも長く籠れるのに情けない。自然写真家としてもっとしっかり体力をつけないとなぁ。また、今年は天気が本当に悪く、16日間の間に雨が降ったのは10日、本当に曇りや雨の日が多かった。さらに花の咲き方が一斉ではなく、咲いては雨が降り、撮影のタイミングはなかなか合わず、厳しい撮影になりました。しかし、動物との出会いや新たな光景を見ることができ、美しい自然の一時を心に写すことができました。この僕の心に残る一時を集めながら撮影していく。記憶にも写真にも残して自然について考え、それを様々な人に伝えていきたいと思います。

今回載せた写真はヒグマです。キツネを見かけた場所でハイマツに隠れながら待っていたら、キツネではなくクマと出会うことができました。大雪山のクマは人間に気づくとすぐに猛ダッシュで茂み等に隠れてしまいます。何百メートルも離れたところにクマを見つけた時、すぐにこちらに気づき逃げられてしまいました。このクマは僕に気づかず、ゆったりと歩きながらハクサンボウフウの根をほじくり返して食べて、ゆっくり休んではまた歩きを繰り返していました。このような自然の姿をみると僕は数千年前の北海道の姿を想像したりします。山や湿原、海や川、湖でクマたちはきっとこうやって生きてきたんだなと、でもそこにはアイヌの人たちが身を潜めてて今にもクマを狩ろうとしてるかもしれない。きっと北海道はそういう自然の時間が流れていたんだと想像を膨らせたりします。

そんなことを考えながらこの写真を撮った時にはかなり近くに来たなと感じました。クマのほうも何かに気づいたのか、顔をあげる回数が増やしていた。しきりに鼻をつかい周囲の状況をつかもうとしているようでした。この時、僕が風上にいたのにも関わらず、クマは周囲を探っても逃げるそぶりは見せませんでした。ヒグマは嗅覚が犬の数倍といわれていますが、聴覚や視覚も使い総合的に判断するのでしょう。最終的には僕のことを目で確認して走って逃げていきました。その後、心臓がバクバク鳴っているのに気付きました。人馴れしていない分、警戒心が強いから逆に向かってこないかと不安になっていましたが、地響きを立たせながら遠くのほうに走り去りました。

人間慣れが問題になっているクマもいる中、大雪山のクマはあくまで人間と距離を置いています。どっちのクマが良いとか悪いとかそういうことも考えたこともありました。もちろんクマの良し悪しではなく人間が原因でこうなっているわけで。僕は動物との間には物理的に、心的距離が必要だと思います。大雪山に生きているようなクマが今後も生き続ける自然であってほしいと願います。そして僕はそのようなクマを今後も撮影していきたい。